都立高校志望校調査(校長会調査)の分析

第一志望の傾向

 令和3年3月の公立中学卒業予定者は72,991人で、前年を2,342人下回ります (男子1,098人減・女子1,244人減)。公立中学3年生の数は底をうち、次年度から増加し令和7年度(現小学4年生が中学3年生になる年度)には約80,000人を超える見込みです。
 都立全日制高校第1志望者の割合は連続して減少しているのに対して、私立全日制高校(国立・他県含む)第1志望者は連続して増加しています。12年前のリーマンショック以降、都立第1志望者の割合は70%台でしたが、4年前に私立志望者が増加し、翌年はその反動があるかと思われましたが、むしろそれ以降さらに私立高校志望の流れが進んでいます。要因は、東京都版の私立高校の授業料軽減の拡張策(実質授業料無償化の対象になる家庭年収の上限が760万円から910万円へ拡大)や、私立高校の入試相談制度(コロナ禍で早く合格を決めたい心理と結びつく)や私立通信制高校への評価の高まりにあると推測できます。
 その私立通信制高校の志望者は、10年前(247人)から5年前(725人)、今回(2,388人)と増え続けています。家で課題を解いて提出する従来の方式の他に、平日に通学するタイプ(通学日数も様々)、Webを活用した授業形態、バラエティー豊富な授業内容など、学習の自由度の高さを求める生徒や保護者が増えているということでしょう。これは、合格の目安が偏差値50を下回る都立高校の志望者数が連続して減少していることとも無関係ではありません。
 都立全日制高校の志望減を学科別の人数でみると、普通科が約2,000人、商業科が約200人、工業科が約230人、総合学科が約160人、それぞれ減少しています。家庭科・福祉科は新設の赤羽北桜の分が増加しました。また、都立高校から総合大学付属校へ移動している傾向は、弱まりながらも続いています。大学新テストを回避したい心理によるものでしょう。
 地域別にみると、旧6学区や旧7学区の普通科では志望増の学校も目立ちます。 コロナの感染が拡がりやすい中心部や、通勤・通学で混雑する路線を回避する心理も働いていると考えられ、従来に比べ地元志向の選択につながっています。
 専門色がはっきりと伝わる学科や時代の要請 (グローバル化・情報技術化・デザイン・美術・舞台表現・動物・環境系…)に即した学科、身につけた資格・技術・感性が自身の一生を充実させたり豊かにさせたりすると思える学科は人気があります。 例としては、国際・多摩科学技術・工芸(デザイン・グラフィック)・園芸(動物)・瑞穂農芸(畜産)・総合芸術(美術・舞台表現)などが挙げられます。

都立高校の今後の動向

 中高一貫校は外部募集枠が2学級と少ないこと、附属中学で3年間学校生活を過ごしている内進生への意識など、志望が限定される要因があります。令和3年度に富士 ・ 武蔵、4年度に大泉・両国が高校募集停止します(白鷗の募集停止年度は未発表)。今回の入試では、これまで国数英について実施していたグループ作成問題を他校同様の共通問題に変更します。
 制服をリニューアルした学校は、特に女子の志望者に影響を与えます。 令和2年度に豊島・田柄・竹台・武蔵村山・美原が制服を変更、3年度に大山が予定しています。服装や頭髪等の生活指導を強化する伝統校は一時的に志望者が減りますが、 学力向上策などの改革が伴って信頼が増せば、志望状況は回復の方向に向きます。
 都立定時制単位制高校 (昼夜間定時制)は、生徒の多様性・不登校・学び直しへの対応が期待でき、居心地のよさなどもあり、中退率の低下にもつながっています。定時制の学費は全日制よりもかなり安価ですが、公立高校の就学支援金制度で、授業料についての差はなくなっています。
 平成30年度から総合学科(チャレンジスクール)は分割募集を取りやめ、普通科も分割募集の募集割合を前期にシフトしているため、倍率は以前より低下しています。チャレンジスクールが、足立地区(令和4年度に荒川商業を改編)や立川地区(令和5年度に多摩教育センター敷地)に新設されます。「好きなものを、好きなときに、好きなだけ」科目選択できるという合言葉を掲げており、普通科とは違う特色のある教育が期待されています。